16日に始まった大学入学共通テストは、大学入試センター試験が「知識を問う傾向が強い」との指摘を受けて、導入が決まった。知識だけでなく、文部科学省が重視する「思考力・判断力・表現力」を測ることを目指している。問題は、どのように変わったのか。
もともと共通テストの目玉は、表現力を測るために国語と数学に導入予定だった記述式問題と、英語の「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測るために活用する民間試験だった。だが、家庭の経済状況による受験機会の格差などの問題を解決できず、2019年に活用が見送られた。
このため解答方法はセンター試験と同じ全問マークシート式となったが、問題の内容や出題形式は大きく変わった。複数の資料や会話文などが盛り込まれて問題の分量が増えるとともに、日常生活と関連づけようと学校での授業の様子を題材にした出題も多い。
現代社会にはマータイさんの「もったいない」が問題に
国語は、評論文を授業で学んだ生徒が内容を理解するために作った三つのノートをもとに、思考力が問われる問題が出た。試行調査で出題されて注目されていた、実用的な文章は出されなかった。
一方、地理歴史、公民では、新傾向の出題が目立った。04年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境活動家、ワンガリ・マータイさんを題材にした現代社会の「第2問」が典型的だ。マータイさんが世界に広めた「もったいない」という言葉について、3人の高校生がそれぞれ考えを発表。資料を含む計2ページほどの発表内容を読み込み、五つの問題に解答するものだ。
リスニング、知識を実際の場面で活用する力問う
今回、特に大きく変わったのが英語だ。「リーディング」(センター試験の「筆記」)で発音やアクセントの単独問題はなくなり、長い英文や資料などが増えたため問題量は6ページ増加。知識を実際の場面で活用する力を問う問題が目立った。「第4問」は、生徒の電子メールや列車の時刻表、水族館の時間ごとの来館者数を示すグラフを読み解いて、もっとも効率的な行程を解答するといった問題だった。
センター試験で2回読み上げられていた「リスニング」の問題文は、6問のうち4問が「1回読み」になった。また、問題量は昨年の10ページから20ページに増え、配点が50点から100点に引き上げられた。
「現代の受験生には、厳しい出題となった」
駿台教育研究所の石原賢一進学情報事業部長は「特に地歴、公民、英語は、複数の資料が盛り込まれると同時に、問題の分量がかなり増えた。読解力がなく論理的に考えるのが苦手な傾向の現代の受験生には、厳しい出題となった」と述べた。英語のリーディングに使われた単語数は前回より4割ほど増え、実用的な問題が大半になったとし、「これまでのような長文の物語や論説文の読解は個別試験で問うしかない。中堅の学生にこれから求められる英語力はネットで海外とやりとりする、今回のような実用的な英語力ということだろう」と分析した。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル